大雪山系は、気候的には本州の北アルプスと同じです
大雪山系は、標高2,291mの旭岳を最高峰とする2,000m級の比較的標高の低い山岳です。
しかし、緯度が高い(北に位置する)ため気象条件は厳しく、本州の3,000m級の山に匹敵します。大雪山麓のトドマツ・エゾマツの森林は、北アルプス上高地の上部にあたりに生育するシラビソ林に相当するものです。
5月 | 黒岳や旭岳・十勝岳山腹では山スキーの最盛期。山はまだ冬です。 |
6月 | 雪解けは始まっていますが、雪が降ることも珍しくなく山頂はまだ厚い雪に覆われています。 |
7~8月 | 雪解けは進んでいますが、7月中旬頃にやっと夏山らしくなります。雪の消えた斜面には高山植物がお花畑をつくり出しています。しかし最低気温が氷点下になることもあります。7月下旬から8月上旬が大雪山の夏です。残雪は日増しに小さくなり、それを追うようにお花畑が広がっていきます。8月中旬~下旬には秋の気配で、山頂部では雪が舞うことも珍しくありません。 |
9月 | 山頂部の紅葉が山麓に向かって進み始め、初雪の季節です。中旬になると山頂部は初冬です。早い年だと下旬には膝くらいまで雪が積もります。 |
10月 | 冬です。日増しに雪が積もり山麓でも初雪の時期です。 |
11~4月 | 真冬と言うより厳寒の時期です。 |
気温 | 大雪山は夏山でも寒いです。7月でも至る所に雪渓があり場所よっては万年雪(越年雪)となります。日射しが消えると日中でも上着がほしくなり、風が吹けば震えが来るほど寒くなります。半ズボン・半襟の軽装は禁物です。防寒衣は必需品です。 |
霧 | 大雪山で恐ろしいのは霧にまかれることです。山頂近くの平坦地では目標がとりづらく、慣れた人でも道に迷うことがあります。特に湿原地帯や雪渓の上ではルートの確保に十分注意してください。道に迷ったら落ち着いて行動し、霧の晴れるのを待つか慎重に元の場所に戻るか、いずれも慌てないで行動することです。 |
雨 | 大雪山は豪雨の少ない所ですが、雨はよく降ります。濡れると寒く、風でも出れば大変。夏の大雪山で凍死することも珍しくありません。雨の時は霧と風を伴うことが多く、道を間違えないように行動することです。雨具は必需品です。避難小屋かテントの中に居るのが賢明です。 |
風 | 山頂部や稜線ではかなり強い風が吹きます。山麓や避難小屋・野営指定地ではさほどでなくとも山頂・稜線では強風のことがよくあります。大雪山では風に吹かれれば寒いです。日射しがあればさほどでないにしても日陰では防寒衣が欲しくなります。雨に濡れて風に当たると急激に体温が奪われ危険な状態になります。テントを張る場合も十分な注意が必要です。 |
・大雪山の夏山は気温が低く、本州の2,000m級の標高とは違います。
・大雪山を縦走するには2,000m前後の所を歩き泊まることになります。北アルプスの「穂高岳」あたりの標高を歩き泊まる装備が必要です。
・9月~6月の期間は冬山として行動計画することが必要です。
発生年月日 |
場所 |
遭難の概要 |
書籍、事件名など |
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1962年12月 |
旭岳 |
北海道学芸大学函館分校山岳部の11名のパーティーが入山し、10名が疲労凍死、低体温症等で死亡。 |
タイトル:凍れる命 著者:野呂幸司 出版社:柏艪舎 出版年:2006年 |
1984年7月 |
旭岳 |
1989年7月、東京都から登山に来た2名の遭難者をヘリで捜索中、旭岳南方の忠別川源流部付近に倒木を積み上げたSOS文字を発見。警察が調査したところ、木文字付近に人骨とテープレコーダーを発見。1984年7月に入山した愛知県から来た20代男性の登山者と判明。 |
大雪山SOS遭難事件 |
2009年7月 |
トムラウシ山 |
旭岳からトムラウシ山へ縦走する50 ~60代の登山客15人、ガイド3人がツアー中に悪天候により8名が低体温症や疲労凍死で死亡。夏山史上最悪の遭難事件と言われる。 |
タイトル:トムラウシ山遭難はなぜ起きたのか 著者:羽根田 治/飯田 肇/金田 正樹/山本 正嘉 出版社:山と渓谷社 出版年:2010年 |
この他にも、大雪山では令和2年度は夏山シーズン中(6~9月)に13件、令和元年度は13件、平成30年度は18件の遭難事故が発生しています。
書籍を読んだり、北海道警察の山岳遭難事故ページを確認し、自分の行動計画に無理はないか自分自身に問いかけ、無理のない登山計画を立てましょう。
https://www.police.pref.hokkaido.lg.jp/info/chiiki/sangaku/sangaku-top.html